竜太のテクニカルメモ

物理やへっぽこなゲーム作りについて易しく解説するよ

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0.001秒ほど過去に情報を送れる(可能性のある?)人工衛星を使ったタイムマシン

ども,竜太です.今回は以前ご紹介した過去に情報を送れるタイムマシンについてちょっとだけ詳しくご紹介します.

まず大前提として未来に行くタイムマシンは元々作れます. 一見冗談のようですが,私たちは誰でも1秒ごとに1秒先の未来に行けるからです. バカにしてるのかって?実は全然そうではありません.遠い未来に行くには超高速度で走るロケットに乗ればだれでも行けるからです. 実際,ジェット機原子時計を積んで地球を何周もすると地上の人たちより経過時間が短いことが知られています.

それでは過去に行くタイムマシンも同じようにしてできるのでしょうか?

ところが,過去に行くタイムマシンは一筋縄ではいきません.というよりもほとんど不可能に近いほど難しいと考えられています. 事実,宇宙論の大家であったホーキング博士などは不可能だと考えていましたし,まともな物理学者の大半が不可能と考えているようです.

しかし,私は量子もつれの相互作用が,瞬間的に伝わることを用いると情報だけなら過去に送ることができる可能性に気づきました. これは実際上は4台の人工衛星を使用すれば実現可能性があり,2台の人工衛星の間隔を\ell人工衛星の相対速度をvとすれば\dfrac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\dfrac{v\ell}{c^2}だけ過去に情報が送れることが分かります. これはvが小さい場合ほとんど1になってしまう\dfrac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}の項の効果を除けば人工衛星同士の間隔とその相対速度に比例する分だけ過去に情報が送れることになります. 非常に速い人工衛星とその間隔を大きくとらねばほとんど実用的とはいいがたいですが,何はともあれ作ることができるかもしれないというのはワクワクしますね.

それではこのタイムマシンについてご説明しましょう. 実際には速度差を生むため逆方向に周回する2組の衛星対を用意するのが良いのですが,ここでは原理だけの説明として,人工衛星ABだけ用意しました.

人工衛星を使ったタイムマシン

上の図で人工衛星Aが地上の地点A'を通り過ぎる瞬間を人工衛星側の座標系をK'系の時刻と座標をt' = 0,x' = 0の瞬間とし,地上の座標系をK系で時刻と座標をt = 0,x = 0とします. また後続の人工衛星B人工衛星Aと同じK'系に乗っていて人工衛星A,Bはそれぞれ地上に対して速度vで運動し,それらの間隔はK'系から見て\ellあるものとします. また,地上の時刻でt = 0のときに人工衛星Bは地上の地点B'を通り過ぎるものとします.このとき,地上の地点A'の観測者が目の前を通り過ぎる人工衛星Aの光の偏光方向を観測するものとします. A'Aの距離がほぼゼロのためこの観測はほぼ瞬間的に行われます.このとき光子の偏光方向が仮に縦偏光であることが分かったとしましょう.いま,上の図のように人工衛星Aの光子は人工衛星Bの光子と強くもつれており, \begin{align} |\psi\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\left( |\uparrow\rangle _A|\uparrow\rangle _B +|\rightarrow\rangle _A|\rightarrow\rangle _B \right) \end{align} となる強相関状態にセットしてあるものとすると人工衛星Aの光子が縦偏光だった場合,人工衛星Bの光子の偏光は必ず縦偏光になります. しかも瞬間的に決まってしまいます. ここで地上のB'地点で人工衛星Bの時刻t'=0のほんの僅かに後に人工衛星Bの光子の偏光方向を観測しましょう. 仮定により,人工衛星Bの光子の偏光方向は縦偏光になっているはずです. それでは地上のB'地点がどこで,いつにこの情報を受け取るのかをローレンツ変換を用いて求めてみましょう. 計算の見通しをよくするためここではc = 1の単位系で働きます. ローレンツ変換は次の通りです: \begin{align} t' &= \gamma (t - vx) \\ x' &= \gamma (x - vt) \end{align} 逆変換はこれを逆に解いて \begin{align} t &= \gamma (t' + vx') \\ x &= \gamma (x' + vt') \end{align} になります. ただし,\gamma = \dfrac{1}{\sqrt{1 - v^2}}です. この逆変換の式に人工衛星Bの光子の偏光状態が縦偏光にデコヒーレンスを起こした直後のK'系での時刻と位置t'= 0,x' = -\ellを代入すると まず位置は \begin{align} x &= \gamma (-\ell + v\times 0') = - \gamma\ell \end{align} となりローレンツ収縮の効果が表れていますが,とりあえず正常のようです. 一方,時刻は \begin{align} t &= \gamma (0 - v\ell) = - \gamma v\ell \end{align} となり何故か負の値になっている! A'地点とB'地点が違うからではないかと思われるかもしれませんが,どちらもK系なのでやはり,時刻t = 0に測定した結果がその前の時点で分かってしまうことになります. 何ならA'地点からB'地点までもつれを用いて情報を送信してもよいでしょう. いずれにしても測定前にどっちの偏光方向になるかが分かってしまうことになります.

不思議ですね. ですが,

ことを用いるとこういったおかしなことが起こってしまうのです.

果たしてこの装置はタイムマシンとなっているのかいないのか? 謎は深まります.

ただし,上の装置では未来の偏光方向を予測できるだけでタイムパラドックスは生じません. もつれを観測しているだけで操作はしていないからです.

上のタイムマシンに何か間違いがあったら教えてください. 訂正してお詫びいたします.