心はやっぱり量子情報である - 竜太のテクニカルメモ

心の原理はあるか？

1905年アインシュタインはマックスウェル方程式を満たす何かに対してそれが満たす波動方程式が全ての慣性系において一定の速さで波が伝わるとしました．この波のことを電磁波といい，通常の可視光線もこれになります．

アインシュタインは電磁波がそれ以上何であるか具体的には示さず，ただ原理として光速度不変の原理を導入しました．アインシュタインは光が何であるかを完全には特定しないで光速度不変を数学で言う公理のように原理に昇格したのです．

さて，ここで心について考えてみましょう．心がなんであるかは今のところ不明ですが，経験事実として同じ心を持った人はいない(ように見えます)．これはあくまでも経験事実ですが，私はこれを逆に 「心は複製できない原理でできている」と考えました．これが私の考えた心の原理です．デカルトの哲学の第一原理である「我思う故に我あり」と同じような原理であるところが特徴です．

この「心は複製できない原理でできている」については私の中で自信のある心の原理だったわけですが，その後数年は全く進展がない状態でしばらく忘れていました．しかし昨日，量子情報と結び付けると非常にうまく説明ができることに気づきました．そこでまず最初に量子情報と量子状態についてお話ししましょう．

量子情報と量子状態

量子力学の根本原理にはよく知られているように不確定性原理というものがあります．これは量子力学的なスケールでは粒子の位置と運動量を両方同時に確定することができないというものです．いま量子 $A$ と量子 $B$ が同じ量子情報を持つ場合と同じ量子状態を持つ場合について考えてみましょう．いま，ある時刻に量子 $A$ の位置を測定したとき位置 $x = X$ が得られたとき，同じ時刻に量子 $B$ の位置を測定すると必ず同じ位置 $x = X$ が得られ，また，ある時刻に量子 $A$ の運動量を測定したときに運動量 $p = P$ が得られたとき，同じ時刻に量子 $B$ の運動量を測定すると必ず同じ運動量 $p = P$ が得られるとき，量子 $A$ と量子 $B$ は同じ量子情報を持つといいます．この状況は同じ位置と運動量を持つ2つの古典粒子を考えたのと一緒です．（当然このままでは二つの粒子は重なってしまいますが．．．）

一方，同じ量子状態の場合は次のようになります．ある時刻に量子 $A$ の位置は例えば確率的に $x = X$ を中心とする正規分布に従う位置で発見されるとき，同じ時刻に量子 $B$ の発見される位置は量子 $A$ とは必ずしも一致しないものの同じ $x = X$ を中心とする同じ正規分布に従い，運動量についても同様とすると，このとき量子 $A$ と量子 $B$ は同じ量子状態にあるといいます．

つまり完全に区別がつかないのが同じ量子情報を持つ場合であり，確率分布だけ等しいのが同じ量子状態であることになります．そして次に説明するように一般に量子力学では同じ量子状態は自由に取れますが同じ量子情報は決してとることができません．

量子複製不可能定理

ja.wikipedia.org

同じ量子情報は何故持つことができないのでしょうか？それは次のようにして説明できます．

量子 $A$ と量子 $B$ が同じ量子情報を持つものと仮定します．このとき同じ時刻に量子 $A$ は位置を，量子 $B$ は運動量を測定します．すると量子 $A$ と量子 $B$ は同じ量子情報を持ちますから，ある瞬間に量子 $A$ も量子 $B$ もどちらも位置と運動量が確定してしまうことになります．しかし，これでは量子 $A$ が不確定性原理により位置と運動量の両方を同時に確定出来ないということに違反します．これにより同じ量子情報はコピーできないことが分かります．もっと言うとこの定理が禁止するのは量子情報の複製であり，乗り移りについては何も禁止していないことになります．実はこの乗り移りこそが，巷で言う量子テレポーテーションなのです．

心は量子情報でできている！

さて心は脳という量子情報と複雑に絡み合っている(と予想される)デバイスに乗っていると考えられます．しかし，この量子情報は複製できませんので，心もまた複製ができないものと予想されます．ここで私が最初に心がみな違っているのは心が原理的に複製できないからだと予想したことを思い出してください．心が量子情報でできていると仮定すると上手く一人一人の心がみな違うことを説明できるのです．心が複製できないのは心が量子情報でできているからだったのです！