竜太のテクニカルメモ

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タイムマシン改良案(過去へのバトンリレーの修正版)

ども,竜太です.

今回は難題だったタイムマシンの0.02秒問題について挑みます.

タイムマシンの0.02秒問題って何?

私の考案したタイムマシンは4台の人工惑星を用いて基本的に0.02秒過去に向かって情報が送れました. しかし,数億年運用しないと数分前にさえ情報が送れないため,かなり実用性は限られていました. 今回はこの問題をクリアするエレガントな解決方法を発見しましたのでご紹介します. ポイントは"過去への情報のバトンリレー"です.

6台の瞬間情報転送装置を4つの人工惑星に取り付ける

まず,問題設定として静止系であるK系の原点であるA地点x = 0B地点x = -\gamma Lを取ります. 次にK系に対してx軸正の方向に速度vで等速直線運動をするK'系を考え,その原点をA'地点, K'系で-Lの地点をB'地点とし,K系とK'系の原点はt = t' = 0の瞬間に重なっているものとしましょう. このときA地点とA'地点,A'地点とB'地点,B地点とA地点の間に瞬間情報転送装置があるものとします. (一方通行で構わない)

また,B'地点とB地点は通常の電波で通信するものとします.

このとき,K系の原点A地点の未来を表す時刻 t = 0A地点から情報M(核戦争が起こった!!などww)を同じA地点の過去に送るものとしましょう. 次の手順を踏むと1ステップ分過去に情報が送れます.

注意してほしいのが,

  1. 瞬間情報転送装置を使うと,同時刻に必ず転送される.
  2. ローレンツ変換を行うと異なる時刻に送られる.

という点です.

1ステップだけ過去に情報を送る!

  1. 時刻t = 0A地点からA'地点へ情報Mを瞬間情報転送装置で送信する.このとき,A'地点の位置と時刻はx' = 0,t' = 0である.
  2. 1.の直後に直ぐに瞬間情報転送装置でB'地点に送信する.このとき,B'地点の位置と時刻はx' = -L,t' = 0である.
  3. 2.の直後に直ぐにB地点に電波で送信する.このとき,K系から見るとK'系のB'に対応するK系の地点B_1から電波が発射されたように見える(ドップラー効果は気にしなくてよい). 地点B_1の位置と時刻はローレンツ逆変換で求められる.簡単のため相対論の研究者が良く使う c = 1の単位系で計算すると, 位置はx = \gamma (x' + vt') = -\gamma Lである.つまり我々の選び方が特殊なため地点B_1は実は地点Bであり, 時刻はt = \gamma (t' + vx') = -\gamma vLとなる.ここですでにある意味情報Mは過去に送れていることになる.
  4. 3.の直後に直ぐA地点に瞬間情報転送装置で送信する.A地点の位置と時刻はx = 0,t = -\gamma vLである.これで完全に1ステップだけ過去に情報が送れたことになる.

2ステップ目以降も見てみよう

2ステップ目ですが,当然ほんのちょっと過去になるので人工惑星の位置が変わってしまってます.これでも最初のステップと同じようにもう一度過去に情報が送れるのでしょうか? 試してみましょう.

  1. 時刻t = -\gamma vLA地点からA'地点へ情報Mを送信する.このとき,A'地点の位置と時刻はx' = 0,t' = -\gamma vLである.
  2. 1.の直後に直ぐにB'地点に送信する.このとき,B'地点の位置と時刻はx' = -L,t' = -\gamma vLである.
  3. 2.の直後に直ぐにB地点に電波で送信する.このとき,K系から見るとK'系のB'に対応するK系の地点B_2から電波が発射されたように見える. 地点B_2の位置と時刻はローレンツ逆変換で求められる.位置はx = \gamma (x' + vt') = \gamma (-L -\gamma v^2 L) = -\gamma L - \gamma^2v^2 Lで,時刻は t = \gamma (t' + vx') = \gamma (-\gamma vL -vL)  = -\gamma vL - \gamma ^2 vLとなる. 今考えている単位系で光速が1であることより,位置がX離れているときは電波が伝わる時間はXだから,B_2からBまで電波が伝わるのは\gamma ^2v^2L > 0秒かかる. したがって地点Bが電波で情報Mを受け取るのは時刻-\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2Lである.(位置はもちろんx = -Lである.)
  4. 3.の直後に直ぐA地点に瞬間情報転送装置で送信する.A地点の位置と時刻はx = 0,t = -\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2Lである.これで完全に2ステップだけ過去に情報が送れたことになる. 心配な人の為に念のため3ステップ目もやってみましょう.こうなります:

  5. 時刻t = -\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2LA地点からA'地点へ情報Mを送信する.このとき,A'地点の位置と時刻はx' = 0,t' = -\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2Lである.

  6. 1.の直後に直ぐにB'地点に送信する.このとき,B'地点の位置と時刻はx' = -L,t' = -\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2Lである.
  7. 2.の直後に直ぐにB地点に電波で送信する.このとき,K系から見るとK'系のB'に対応するK系の地点B_3から電波が発射されたように見える. 地点B_3の位置と時刻はローレンツ逆変換で求められる.位置はx = \gamma (x' + vt') = \gamma (-L + v(-\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2L)) = -\gamma L -\gamma v(\gamma vL +\gamma ^2vL - \gamma ^2v^2L)で,時刻は t = \gamma (t' + vx') = \gamma (-\gamma vL -\gamma ^2vL + \gamma ^2v^2L -vL) = -\gamma vL - \gamma^2vL - \gamma ^3vL + \gamma ^3v^2Lとなる. B_3からBまで電波が伝わるのは \gamma v(\gamma vL +\gamma ^2vL - \gamma ^2v^2L)秒かかる. したがって地点Bが電波で情報Mを受け取るのは時刻-\gamma vL(1 + \gamma (1-v) + \gamma^2 (1 - 2v) + \gamma ^2 v^2)である.(位置はもちろんx = -Lである.)
  8. 3.の直後に直ぐA地点に瞬間情報転送装置で送信する.A地点の位置と時刻はx = 0,t = -\gamma vL(1 + \gamma (1-v) + \gamma^2 (1 - 2v) + \gamma ^2 v^2)である.これで完全に3ステップだけ過去に情報が送れたことになる.

さて,式変形の勘違いを訂正したら,電波で送信しなきゃいけない個所が出てその分ロスが出てしまいましたorz... これですと,ステップ数Nを大きくとった時,時間のロスが大きすぎになってしまうでしょう. また,現時点では式変形がやや複雑なため,一般公式も出せていません. この為,どれだけ過去に送れるかもはっきりしなくなってしまいました. いつか時間のある時,一般公式を導いてどれくらいステップ数が稼げるか調べてみたいと思います.

いったいどれだけ過去に情報が送れるの?

いつかまた検証してみます.

 c = 1の単位系で働いているけど?

これは簡単です.今考えているのは光速=1の単位系で考えています.したがって光速を基準にしてすべて測るか,あるいはV := v/cで置き換えればよいだけです. 不安な人の為に前者で行うと,人工惑星の公転速度は光速の0.002\%ですからv = \frac{0.004}{100} = 0.00004, 公転半径は500cですからL = 500です.したがって3ステップの場合,t \approx 3\times 0.00004\times 500 = 0.06 となります.したがってN = 3とすれば大体0.06秒ぐらい巻き戻せることになります.

タイムマシンは作れるか?

瞬間情報転送装置は電波を使った量子暗号通信とほぼ同じ技術ででき,実際作れるはずです. またIPパケットを送るようにしてあればいとも簡単に電波で古典情報を送れます. このためこの技術を使えば情報だけ過去に送るタイムマシンは十分簡単に作ることができるはずです. 問題は電波で通信する際にロスが出てしまう問題です. これが克服できればブレークスルーとなり,数十分は過去に情報を送れるようになるでしょう.

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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