ども,竜太です.
今回から始まるシリーズは最終的にエルミート演算子がユニタリ行列で実行列に対角化できることを示したいと思います.
まず最初に随伴演算子についてご紹介します.
随伴演算子とは?
をヒルベルト空間とするとき,上の任意の線形演算子に対して,任意のの元とに対して, が成り立つようなのことをの随伴演算子と呼び, と表します.
エルミート演算子とは?
やや正確ではないのですが,線形演算子がを満たすとき,を自己随伴演算子またはエルミート演算子と呼びます. 自己随伴演算子は要するに自分自身が随伴をとったものと等しい演算子です. 式にするとが任意のの元とに対して 成り立つような演算子のことを指します.
線形演算子の固有値
を線形演算子とするとき,あるゼロでないケットベクトルとある複素数に対してとなるとき, を演算子の固有値に属する固有ベクトルと呼びます.直感的には固有ベクトルとはその演算子を作用させたときに長さだけが変化して向きは変わらないようなベクトルで,その長さの伸び縮みの比率が固有値になります(複素数の固有値の場合このイメージでは無理ですが).
エルミート演算子の固有値は実数になる.
不思議なことに線形演算子の中でもエルミート演算子の固有値は必ず実数になります. 示してみましょう. を固有値に属するエルミート演算子の固有ベクトルとします.式で表すとです. ここで次の計算をしてみます:
\begin{align} \alpha\langle\boldsymbol{x}|\boldsymbol{x}\rangle &= \langle\boldsymbol{x}|\alpha\boldsymbol{x}\rangle \\ &= \langle\boldsymbol{x}|A\boldsymbol{x}\rangle \\ &= \langle A^{\dagger}\boldsymbol{x}|\boldsymbol{x}\rangle \\ &= \langle A\boldsymbol{x}|\boldsymbol{x}\rangle \\ &= \alpha^* \langle\boldsymbol{x}|\boldsymbol{x}\rangle \end{align} 以上よりなのでエルミート行列の固有値は必ず実数になることが示せました.
次回は「エルミート演算子の異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する」について書きます.
ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^