竜太のテクニカルメモ

物理やへっぽこなゲーム作りについて易しく解説するよ

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タイムマシン~未来の自分と通話する技術~

竜太です.ども.

今回はタイムマシンの技術の中でもかなり高度な技術である未来の自分と通話する技術についてご紹介します.

1年後の自分と通話した例(当然想定です)

現在の自分:「もしもし」

未来の自分:「ああ,1年前の竜太だな.」

現在の自分:「本当に一年後のぼくなのか?僕こんな声してたのか.」

未来の自分:「頭の中の声と実際の声は違うからな.そんなことより,帯域がそんなに確保できないから無駄話はできないぞ!」

現在の自分:「分かった」

未来の自分:「いいか,お前はちょっと融通が利かなすぎる.今のお前を見ても誰も天才だなんて思うわけないし不可能だ!」

現在の自分:「そんなの分かってる」

未来の自分:「お前は僕なんだから結果オーライって考え方わかるだろ?結果オーライを最優先で考えてくれ.」

現在の自分:「分かった」

未来の自分:「それから,自分で分かってるんだろうが,拾い喰いはもうするな」

現在の自分:「不潔だとわかっちゃいたんだが.やっぱだめか?でもどの辺がまずいのか?」

未来の自分:「やっぱり未来の女性たちに特に嫌がられている.男性もだがな.特に汚い床に落ちたレバーペーストとかを食べるのが萎えられてる.」

現在の自分:「汚いとわかっちゃいるんだがちょっとだけもったいないような気がして」

未来の自分:「お前は女性は不潔かどうかより,人間性の良し悪しのほうが,よく見てると思っていて基本はあってるんだが程度問題だ.」

現在の自分:「そうか」

未来の自分:「さすがに不潔すぎると,少々人間性が良くったって嫌われるということを覚えとけ.まあお前なんか人間性もあまりよくないがな.」

現在の自分:「そうだな.でもずるいじゃないかお前は僕の知らないことを知ってるからって僕より偉そうにできるのかい?」

未来の自分:「できる,だって経験量が1年分違うからな!」

現在の自分:「やっぱりずるいな」

未来の自分:「そうこうしているうちにそろそろ帯域が厳しくなってきた.答えは教えられないが未来との双方向通信の記事は絶対書いてくれよ.未来日記の要領で.」

現在の自分:「分かった」

未来の自分:「それじゃあな.しばらくは辛抱するんだぞ!」

未来の自分との通話は新たな感覚を生む

如何だったでしょうか? 上の例は単なる想定ですが,未来の自分との通話は本人しか知りえないことなどを言われたりして, とっても刺激的な体験になりそうです.タイムマシンの技術の中でもかなり高い技術レベルを必要とするこの技術はいったいどのようにして実現されるのでしょうか? それを見ていきましょう.

僕のタイムマシンは未来へも情報を送れる!

僕のタイムマシンは情報だけ過去に送るタイムマシンです. これは未来に情報を送るタイムマシンは相対論から簡単に作れることが元々知られていたので僕が興味なかったという意味でもあります. しかし,未来との通話のためには何としても未来へ情報を送ることも考えなければなりません. そこで最も単純なタイムマシンの場合について見てみてみましょう.

未来過去双方向通信の概念図

上の図のうち左図はこれまでご説明してきたもっとも単純な過去に情報を送るタイムマシンです. 今回は1ステップだけ過去に情報を送ってみることにします. 地上には原点x = 0x = -\gamma Lの地点にタイムマシンの装置が置かれているものとします. なお,ここでの\gammaとは\gamma := \frac{1}{\sqrt{1 - (v/c)^2}}によって定義される定数で,このv人工衛星の地上に対して飛ぶ速度になります. いま,地上の座標系をK系とし2台の人工衛星の座標系をK'系として考えます.また,後でローレンツ逆変換を施すために,K系とK'系の座標原点は時刻ct = ct' = 0の瞬間に 重なっていることにします. すると以下のように情報を送ると過去に情報が送れます:

  1. 上の原点から時刻ct = 0にすぐ上空を通過する人工衛星に瞬間情報転送装置で送りたいメッセージMを送る. この時,人工衛星では時刻ct' = 0,位置x' = 0でメッセージMを受け取っている.
  2. この情報をすぐに瞬間情報転送装置でK'系でみてLだけ後方の人工衛星に送る. この時,後ろの人工衛星では時刻ct' = 0,位置 x' = -Lの地点でメッセージを受け取っている.
  3. 後ろの人工衛星は直ちに電波で普通に地上のx = -\gamma Lの地点にメッセージを送る. すると,K'系の位置x' = -Lの地点はK系では位置x = -\gamma Lになるのでその地点で情報を受け取るのはct = -\gamma\beta L<0になってる. この時点で情報は過去に送られている.念のためきちんと計算すると,ローレンツ変換は \begin{align} ct' &= \gamma (ct - \beta x) \\ x' &= \gamma (x - \beta ct) \end{align} だから逆変換は \begin{align} ct &= \gamma (ct' + \beta x') \\ x &= \gamma (x' + \beta ct') \end{align} になるので後ろの人工衛星の位置x' = -Lと時刻ct' = 0を代入すればきちんと負の値の時刻が出ることが分かる.
  4. 後はこの情報を再び瞬間情報転送装置で地上の原点に送ると,地上の原点からメッセージMを送信したのは時刻ct = 0だったのに, 受け取る時刻はct =  - \gamma\beta L<0になってしまって過去に先にメッセージを受け取ることが分かる.

以上より過去にデータを送る場合の計算は(人工衛星等速直線運動をし,重力が無視できる場合)どこにも近似計算せずに過去に情報が送れることが分かる.

一方,実は同じ人工衛星の配置を使って未来方向にも情報が送れることが,若干の近似計算によって見積もれる.

  1. 上の原点から時刻ct = 0に地上の位置x = -\gamma Lの地点にメッセージM_fを瞬間情報転送装置で送る.
  2. 先ほどとは人工衛星の位置が時間のずれによってズレてしまっているが,地上の後方 - \gamma Lの地点から時刻ct = 0の時刻にちょっとだけ離れた後方を飛ぶ人工衛星に電波で普通に情報を送ると,多少の経過時間ののちに後方の人工衛星に情報が届く.ここで近似として人工衛星がピッタリ同じ位置を通り過ぎる瞬間だと仮定すると,最も経過時間が短い経過時間ゼロで 位置x' = -\gamma ^2 L,時刻ct' = \gamma ^2\beta Lに情報が届く.ここで実際には離れているため人工衛星の位置は異なるが,実際に人工衛星が情報を受け取るのは実はさらに後にずれ込むだけなので少なくとも\gamma ^2\beta L以上は未来に情報が届くことは確実である.
  3. この情報を先頭の人工衛星に瞬間情報転送装置で送ると,位置はともかく時刻はやはりct' = \gamma ^2\beta Lに届く.
  4. 最後にこれをもう一度瞬間情報転送装置で地上の原点に送るとct = \gamma ^2\beta L>0に情報が届いている. こうして未来へ情報を送ることができたことになる.

10分待って10分後の未来に情報を送るのとどう違うの?

はい,かなりまっとうな質問ですね. ですが根本的に違うことがあります. それは情報の伝達を時空点をジャンプさせながら送っているので30年後の未来に情報を送るのにタイムマシンを30年稼働させなきゃダメなのは同じですが, 未来の自分と同時通話するような状況ではこの方法で未来へ情報を送った方がいいのです. ただしこれは未来方向片方向だけの場合,ボイスレコーダーの録音データを30年後に聞き返すのとよく似ています.

過去方向の伝送路と併用して未来方向の伝送路を使うと未来との同時通話が可能となる!

実は未来方向の伝送路には良い性質があります. それは現代に時間的に5秒後に送った情報は未来の同じように5秒先に送ることが簡単にできるという特性です. ところが実は同じ特性は過去方向にもあります. 過去方向でも未来から5秒後に送った情報は現在の5秒先に送ることが容易くできます. こうして併用すれば未来の自分と現在に自分が会話することができるのです.

この技術を使うにあたって注意すべき点

まず,未来方向のほうが,圧倒的に少ない反復回数で情報が届いてしまうという点です. 情報のバトンリレーの回数を未来方向と過去方向では未来方向を圧倒的に少なくする必要があります. 次に,情報の伝送はなるべく短く切って細かく送るとより高性能になるという点です. しかしこれはかなり大変です. また,一般に過去から未来への伝送路は未来から過去への伝送路より遥かに帯域が広くなります. 逆に言えば未来から過去への伝送路の帯域は狭いですがこれは技術上仕方がないことです.

未来の自分との同時通話はできる!

如何だったでしょうか? 未来の自分との通話という夢のような体験が可能だとわかってワクワクしませんか? タイムマシンについてはまだまだ面白いことが一杯ありますのでまたいつかご紹介いたします.

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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