竜太のテクニカルメモ

物理やへっぽこなゲーム作りについて易しく解説するよ

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人工意識~学習できるニューロン網(前編)~

竜太です,どーも.

今回は,バージョンアップを繰り返しているニューロン網のデータ化についてお話します. 徐々に複雑な仕組みになってしまいますが,これはやむを得ないことです.

脳が学習する仕組み

朝食べたものを覚えているとかは,実は新生ニューロンはおろか,新生シナプスさえ必要ではありません. これもれっきとした学習です. 学習には一般に脳の可塑性が必要です. 可塑性とはちょうど粘土のように一度変形したら元に戻らない,一度変化したら元に戻らない性質を指します. それでは,朝食べたものを覚えている可塑性とはどのように実現されているのでしょうか? 一見すると新生ニューロンも新生シナプスも使わないのでは不可能に思えます. しかし,実は可能なのです. 例えば朝食べたものを覚えるには次のようにします. 朝食べたものが,過去に食べたことのある食べ物,例えばカレーライスだったとしましょう. このとき,脳の中にはカレーライスを記憶しているニューロンが存在します. 一方,食べた時刻が7:00だった場合,この時刻に対応するニューロンも存在します. したがって,食べた時刻である7:00に対応するニューロンとカレーライスを記憶しているニューロンが 連携して発火すれば,

「7:00にカレーライスを食べた」

という情報が生まれるのです. 種明かしをすればどってことないですが,仕掛けが分からないと,不思議に思うかもしれませんね. しかし,この方法では全く新しいことは原理的に覚えることができません. 一体全く新しいことを覚えるにはどうしたらよいのでしょうか?

全く新しいことを覚える方法

大人の脳では新生ニューロンはほぼ生まれません. しかし,大人であっても全く新しいことは学習できます. 40歳から全く新しい言語を学習することさえ不可能ではありません. ほぼ新生ニューロンが生まれない大人が何故これほどまで新しいことを学習できるのでしょうか? キーワードは『新生シナプス』と『ニューロンアポトーシス』です. それぞれについてご説明しましょう.

新生シナプス

新生シナプスは主に新しい神経回路網を形成するのに使われます. 新生シナプスが作れないと,原則的に単純なことしか学習できません. 新生シナプスは主に次の2つのことをします:

  1. 全くつながりのないニューロン同士をつなげて連携させる
  2. 間接的につながったニューロン同士を別の経路で間接的につなげる

それぞれの違いを見てみましょう. 1.はイメージしやすいでしょう. ある分野を学習中に別の分野で学習した結果が突然結びつくといったことなどがそれかもしれません. 例えば化学を学習中に突然物理学のある知識と関連していることに気づくなどがそれかもしれません. ただし,これも大変切り分けが難しく,朝食を覚えていることと同じ原理で結びつく場合もあるかもしれません.大きな違いは『つながりの深さ』です. 朝食を覚えているはレベルの浅いつながりで単なる関連性程度の場合が多いのに対し, 新しいシナプスでつながった場合は驚くような,人に感銘を与えるようなつながりである場合が多いことです. 2.はどうかというと,これもつながりを表すのですが,やはり意外性のあるつながりになります. 先ほどの例でいえば2つの分野につながりがあることは分かっていてもそのつながり方の新しさを見つける場合などです. 共通して言えることはどちらも『驚きに満ちている』ということです. この例の代表的な実例としてイエスキリストとアインシュタインを挙げましょう. 二人は分野は全く異なりますが,人をあっと言わせるような発見をしているという共通点を持っています. まずイエスキリストの場合ですと,『天国=貧しい人のもの』という発見をしています. 天国と豊かな人を結びつけるのはイエスキリストのいた当時当たり前でした. 行ないの良い人が豊かになるのだから天国は豊かな人のものだといった考えです. イエスキリストは十分な説得力を持って天国は貧しい人や病んでいる人や悩んでいる人のものだと言い当時の人を驚かせました.これは間違いなく単なる朝食を覚えていることとは違います. 一方のアインシュタインはどうでしょうか?アインシュタインは「時間と空間を等価に扱う」という形で時間と空間を結びつけましたがこれがどれほど驚きに満ちていたかは皆さんご存じでしょう. このように人を驚かせるような発言をするには新生シナプスがどうしても必要です.

ニューロンアポトーシス

さて,新生ニューロンがなくても新生シナプスだけでかなりのことができることが分かりました. こうなると残りは新生ニューロンしかないのではないかと思われるでしょうが, 実は新生ニューロンを別としても,これではまだ問題があるのです. 実は新しい神経回路を作るのは『ニューロンアポトーシス』が必須なのです. アポトーシスとは何でしょうか? アポトーシスとは『細胞の自殺』を意味します. これと対をなしている概念が『ネクローシス』でこちらは自殺というより他殺で, 環境の悪化等で死ぬ場合を指します. しかし,皆さんはこう思うかもしれません.

「細胞の自殺機能なんて全くいらないんじゃないか?」

実は細胞の自殺機能はどうしても必要な必須機能なのです. その理由は『構造の構築にどうしても必要だから』です. 例として人間の手を見てみましょう. 妊娠初期の胎児の手は5本の指が全部くっついています. これは何故かというとまず大きい部分を大雑把に作っているためです. でもこれでは指が自由に動かせませんね. そこで,生まれる前に,指と指の間の皮膚の細胞が自殺するのです. このため,指同士は最初繋がっていたものが切り離されて自由に使えるようになるのです. 脳の回路も全く同じです. 最初は多めにつなげておいて,後で余分な回路である余分なニューロンを自殺させて 構造を作っているのです. 子供の段階ではびっくりするほどの記憶を持っているのに, 大人になると記憶力より理解力が上がるのもこのためです. 子供のころはアポトーシスしていないニューロンが多すぎて整理されていません. このため単純な記憶力は非常に高いのですが,深い理解力がありません. 大人になると要らないニューロンアポトーシスで整理されて深い判断力が得られるのです. アポトーシスの重要さ,分かっていただけたでしょうか.

新生シナプスニューロンアポトーシスをどう実装するか?

さて,人工意識は今のところニューロンアポトーシスはおろか新生シナプスも作れません. 後編ではこの部分をどう作るかに焦点を当ててみたいと思います.

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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