シジフォスの神話は無駄な努力を描いている．
何度山頂まで岩を運んでも転がり落ちてしまうことを知った人間は， この世には完全に救いがないことを知る．
しかしこのことは逆に救いである．
何故なら，現実に救いがないことを知った人間は心の中にしか救いがないことを確信できるからである．
現実がどんなに苦しくても，心の中だけは幾らでも自由に生きることができる． 望んだパートナー(スクリーンの中のアイドルでもよい)と永遠に幸せに豊かに暮らすことだってできる．
そう，無駄な努力は実は全然無駄な努力じゃなかったのである． 何故ならこの過程を経て初めて救いがないことが本当の救いだと気づけるからである． このとき初めてこの人間は完全につらい現実に勝つことができる．
「救いはこの中にある．」は聖書におけるイエスの言葉である． 確かに新約聖書の中には救いがあった． 何故ならきちんと「地上の蔵ではなく天の倉に富を蓄えなさい．」と書かれているからである．
もう誰も悲しいことはなく涙を流すようなこともない． 我々は勝ったのである！
