竜太のテクニカルメモ

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推進力はヴァシミールエンジンで決まり(火星移住計画)

竜太です.

今回は火星移住計画で使用するロケットエンジンについて提案します.

従来の化学ロケットでは9カ月かかる

火星は大体2年に一回地球に大接近します. そのタイミングを利用して火星まで最短でロケットを届けることができる期間のことを「打ち上げの窓」と呼びます. 打ち上げの窓が大体2年に一回訪れるので火星探査機もそれに合わせて2年ごとに打ち上げられます.

しかし,従来の化学ロケットではこの打ち上げの窓を利用しても火星まで大体9カ月かかってしまいます. これでは宇宙飛行士たちを狭い宇宙船内で9カ月間も滞在させなければならないため大量の物資,特に水が必要になってしまいます. 歯磨きを一日一回夜(?)寝る前だけにし,シャワーを一週間に一回にしたとしても3人の宇宙飛行士たちで合計100トン近く水が必要になってしまうかもしれません. 宇宙船が飛んでいる時間が長くなるとそれだけ不具合が発生しやすくなるのも問題でしょう.

何とか火星までたどり着く日程を短縮できないものか? そこで登場するのがヴァシミールエンジン(比推力可変型プラズマ推進機 (VASIMR))です.

ヴァシミールエンジンって何?

日本語のウィキペディアには次のような説明が書かれています:

動作原理

VASIMRは主に3つのセクションから成る。推進剤ははじめに1つ目のヘリコン・アンテナにより電離され、低温の(全体のガス温度が低い)プラズマとなる。2つ目のヘリコン・アンテナでRF放電によるICRH(Ion Cyclotron Resonance Heating:イオンサイクロトロン共鳴加熱)を利用したエネルギーのブーストが行われる。高いエネルギーを得たプラズマは磁場ノズル内で膨張、さらに電磁気的な推力を発生し、高速で後方へと加速される。

このような原理から、VASIMRは電熱加速のシステムとも、電磁加速のシステムであるともいえる(研究者は電熱加速ではないとしているが)。無電極のシステムであるため、電極の損耗に伴うシステム寿命の制限から開放されるだけでなく、DCアークジェットよりもはるかに高いプラズマ温度を達成することが可能である。

なんだか難しそうですね.ですが簡単に言うと電子をはぎ取ってプラスに帯電させた水素ガスのプラズマを加熱し,その膨張したプラズマを磁場で加速して後方へ噴出するといったところでしょうか.ニュートンの第三法則の作用反作用の法則を利用しているのは通常の化学ロケットと同じです. ポイントは,

  1. 長時間噴射できる
  2. 出力が自由に可変できる
  3. 化学ロケットほどの推力は出ない
  4. 比推力は化学ロケットの10倍以上
  5. 長寿命
  6. 電力をかなり必要とする
  7. 噴射剤である液体水素などはそれほど積まなくてよい
  8. 現在の技術で作ることができる

などでしょうか.全体的に優れていることが分かると思いますが,特に8.がいいですね.SFの世界の核融合ロケットや反物質ロケットと違って 今すぐ作れるわけです.夢が近づきますね.それでは一個一個見ていきましょう.

長時間噴射できる

これはもちろんどれだけの推力にするかで変わってきますが,通常の化学ロケットの10倍以上の長さは噴射できます. 当然長い時間噴射したほうが長いこと使えるので優れてますね.

出力が自由に可変できる

一般にヴァシミールエンジンのような電気推進ロケットでは投入する電力が一定なら推力と比推力は反比例します. つまり,一時的に大きな推力を得たければ大量にガスを噴射して大きな推力を得る代わりに噴射剤を大量に消費するし, 長時間推力を得たければガスの噴射を少量にし,小さな推力の代わりに長時間加速できます. これによりヴァシミールエンジンはその時々の状況に合わせて最適な出力を得ることができます. これがヴァシミールエンジンが比推力可変型プラズマ推進機が語源である理由です. なお,投入できる電力が大きい場合,推力と比推力の積それ自体を大きくできます.

化学ロケットほどの推力は出ない

ヴァシミールエンジンの最大の欠点は化学ロケットほどの推力が出ないことでしょう. 原則的に少量のガスを超高速で噴射する方式ですので,最終的な到達速度は大変速いのですが,馬力が出ません. このため,地球から直に打ち上げることは半永久的に不可能でしょう. とはいえ,通常のイオンロケット等よりはずっと大きい推力が得られますので, 地球の衛星軌道から火星の衛星軌道までを飛行するのであれば全く問題なく実現できます. 惑星間飛行に最適のロケットといえるでしょう.

比推力は化学ロケットの10倍以上

小さな推力といったのでダメじゃん,と思った方もいらっしゃるかもしれませんが,ヴァシミールロケットは比推力が化学ロケットの10倍以上はあります. 比推力とは1キログラムの噴射剤で一キログラムの推力を何秒間発生できるかという値で,化学ロケットで多めに見積もって500秒程度,ヴァシミールエンジンは 現在完成している部分だけで大体5000秒もあります.つまり,小さな推力で比較すればヴァシミールエンジンのほうが10倍長持ちするわけです. また,噴射剤の速度も化学ロケットよりはるかに速いので,火星までの長期間の旅行では大変便利なわけです.

長寿命

通常の電気推進ロケットと異なり電極がないため部品の消耗がほとんど起こらず,故障しにくい長寿命のシステムといえます. 化学ロケットと比べてもかなり長寿命ですので,火星に行くなど長時間の航行にはもってこいでしょう.

電力をかなり必要とする

ヴァシミールロケットは一応ソーラーパネルで供給される電力でも稼働させることは可能ですが,ギリギリです. しかも,火星に近づくにつれソーラーパワーも小さくなってしまいます.ヴァシミールエンジンの本来の性能を発揮するには原子力エネルギーが必須でしょう. また投入される電力が大きければ大きいほど推力と比推力の積自体を大きくでき効率が向上します. 原子力を大量に用いて大量に電力を供給すれば飛躍的に性能の向上が見込めるでしょう.

噴射剤である液体水素などはそれほど積まなくてよい

構造上,わずかなガスを高速で噴出す仕組みですので噴射剤は比較的少なくて済みます. 化学ロケットよりははるかに少量で済むわけです. とはいえ火星までは長旅ですから,そこそこは必要でしょうが.

現在の技術で作ることができる

なんといってもこの点が突出して優れています. どんな優れた技術でも,今使えないのであれば,さほど有望ともいえないでしょう.未来の技術という意味では有望でしょうが. ヴァシミールエンジンはすでに地上の燃焼試験を終了しており,若干の投資があれば,今すぐにでも惑星間航行ロケットの推進力として使用できます. このため,資金さえ集まれば今すぐ宇宙ステーションから火星に向かうことができるわけです. 必要なのは地球側と火星側の宇宙ステーションと火星着陸船です. もはや火星は遠くはなくなったのです.

人口冬眠が出来なくても火星まで行ける!

人口冬眠は長い宇宙旅行で必要な技術と考えられていますが,まだまだ完成までは厳しいものがあります. しかしヴァシミールエンジンがあれば火星まで3カ月以内程度で到着できます. このぐらいの期間だと,現在の技術で十分に3人程度の宇宙飛行士を人工冬眠を使用せずに火星まで送り出すことができます. 火星開発はもはや夢ではなくなりました!

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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