竜太のテクニカルメモ

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エルミート演算子はスペクトル分解できる

竜太です.

今回はエルミート演算子が,その固有値にその固有空間に射影する射影演算子との積の和で書けるということを示したいと思います.

前回までに次が示されました:

  • エルミート演算子固有値は実数A|\boldsymbol{x}\rangle = \lambda |\boldsymbol{x}\rangle\Rightarrow\lambda^* = \lambda
  • エルミート演算子の異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する A|\boldsymbol{x}\rangle = \alpha |\boldsymbol{x}\rangle ,A|\boldsymbol{y}\rangle = \beta |\boldsymbol{x}\rangle ,\alpha\neq\beta\Rightarrow\langle\boldsymbol{x}|\boldsymbol{y}\rangle = 0 ここでまだ分かってないこととして同じ固有値に属する固有ベクトルたちを直交にとれるかという点があります. しかしこれは実は普通にできます.というのも線形独立なベクトルから正規直交基底を作るアルゴリズムであるグラム・シュミットの直行化法を使えば同じ固有値に属する固有空間が閉じていることより いつでも正規直交基底が取れるからです.ただし,異なる固有値の場合は一般には複数の固有値にまたがったベクトルの線形結合になってしまうため,一般には直交しなくなります. ただし,今考えているエルミート演算子の場合には異なる固有値に属するだけで直交してしまうので,結局,すべてのVの基底について完全正規直交基底が取れるとしてよいことが分かります.

エルミート演算子はスペクトル分解できる

式で表すと次の形のものを示します:

\begin{align} A|\boldsymbol{x}_i\rangle = \lambda _i|\boldsymbol{x}_i\rangle ,\langle\boldsymbol{x}_i|\boldsymbol{x}_j\rangle = \delta _{ij}\quad (i,j = 1,\dots , n) &\Rightarrow A = \sum _{i=1}^n\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i| \end{align}

これを示すにはVの任意の元|\Psi\rangleが左辺のA写像しても,右辺の\sum _{i=1}^n\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i|写像しても 同じ元に写像されることを示せば十分です.いま,任意の元|\Psi\rangleAのエルミート性より,その固有ベクトルたちで完全正規直交系となっているものが選べるので, あるC_iたちによって|\Psi\rangle = \sum_{i=1}^nC_i|\boldsymbol{x}_i\rangleと表せるので,これに先ほどのを作用させてみると,

\begin{align} A|\Psi\rangle &= A\sum_{i=1}^nC_i|\boldsymbol{x}_i\rangle \\ &= \sum_{i=1}^nC_iA|\boldsymbol{x}_i\rangle \\ &= \sum_{i=1}^nC_i\lambda_i|\boldsymbol{x}_i\rangle \end{align}

となる. 一方,右辺を作用させると,

\begin{align} \sum _{i=1}^n\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i||\Psi\rangle &= \sum _{i=1}^n\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i|\sum_{j=1}^nC_j|\boldsymbol{x}_j\rangle \\ &= \sum _{i=1}^n\sum_{j=1}^nC_j\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i|\boldsymbol{x}_j\rangle \\ &= \sum _{i=1}^n\sum_{j=1}^nC_j\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\delta_{ij} \\ &= \sum _{i=1}^nC_i\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle \end{align}

となり全く同じ形となりました. これより

\begin{align} A &= \sum _{i=1}^n\lambda _i |\boldsymbol{x}_i\rangle\langle\boldsymbol{x}_i| \end{align}

が示されました.

次回は「エルミート行列はユニタリ行列で実行列に対角化できる」について証明します.

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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