竜太のテクニカルメモ

物理やへっぽこなゲーム作りについて易しく解説するよ

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それでも恒星間飛行は光子ロケットしかない

ども,竜太です.

以前,火星開拓にはヴァシミールエンジンを使ったロケットしかない,と書きましたが,今回は それでも恒星間航行には光子ロケットしかないということを書きます.

その前に通常のロケットについて書きましょう.

通常の化学ロケットは次のような性質があります:

大きな推力が得られる

化学ロケットの最大の魅力は何といっても大きな推力が得られる点です. このため地上から打ち上げるロケットはほとんどの場合化学ロケットになります. ヴァシミールエンジンができたからと言ってそこは変わらないわけです.

大量の燃料を積まなくてはならない

その代わり,大量の燃料を積まなければなりません. アポロ11号の場合燃料の重さは実に総重量の95%にもなります.

最終到達速度が小さい

噴射剤の速度が小さいためあまり長いこと加速できません. このため毎秒10キロメートルぐらいまでしか加速できません. これは光速の0.01%より小さいです.

比推力が小さい

大量の燃料を積まなければならないことと関係して推力を長時間得ることも不可能です.

大量の燃料の重さの分まで考慮して燃料を積まなければならない

化学ロケットではその燃料の大半が燃料自体を運ぶために使われます.

一方,光子ロケットには次のような特徴があります:

非常に小さな推力しか得られない

発射するレーザー光の光子の運動量は光子のエネルギーの式E = cpによって小さな運動量しか持ちません. このため大きな推力を得ることは不可能です.

燃料は実質いらない

レーザー光を生成するための電力を除けば燃料は一切いりません. このため核燃料からエネルギーを得る場合E = mc^2 = cpより,p = mcの運動量が得られます. すごい莫大じゃないか!と思われるかもしれませんが,通常原子炉は小さな質量しか減り続けませんので, それほど大きな推力は得られません. 例えば3メガワットの電力の場合,エネルギーEが3メガジュールですから[c= 300M]とするとp = \frac{3M}{300M} = 0.01という運動量になります. これは1キログラムの物体を1秒間に1センチメートル加速する力に相当します. ただしその分燃料は何年も持ちます.

最終到達速度は光速付近

実はこの方式は光速付近まで加速できるほぼ唯一の方式です. 将来ニュートリノ推進が実現すればそれも光速付近まで加速できるのですが,その場合でもこちらの方が最終到達速度はわずかに速いでしょう. 恒星間飛行に向いた方式です.

比推力が大きい

もっとも大きい比推力が得られるでしょう.

燃料が核燃料だけなので実質燃料の重みの分だけ燃料を搭載する必要がない

燃料を運ぶための燃料という無駄がなくなります.

如何でしょうか?地上から打ち上げる時には使えないものの,恒星間航行には非常に向いた方式であることがお分かりいただけると思います. さらに言えば光速付近まで加速できた場合,相対論的効果により,宇宙船内の時間がほぼ進まなくなります. このため例えば4.3光年離れたアルファケンタウリまで行く場合でも航行時間が10年としても船内の時刻では10年かかりません. これは長時間飛行すればするほど有利な話です.

原子炉の出力は4メガワットあればかなり高性能になる

大体3メガワットのレーザー出力があればかなり実用的になるといえそうです. 問題はレーザー装置の耐久度が追い付かない可能性がありますので,大きな面積に弱いレーザーロケットエンジンを大量につけて耐久度を向上することが考えられます.

如何だったでしょうか? 光子ロケットは既存のレーザー技術を使えばすでに作ることはできますし,すでに10メガワットクラスのレーザーも存在します. (なお大阪大学では2ペタワット=2000兆ワットのレーザー出力を1ピコ秒の間に発生させることに成功したとのことである) アルファケンタウリまでの無人探査なら十分現実的になったといえそうです.

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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