竜太のテクニカルメモ

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完全な非破壊検査技術

ども,竜太です.

今回は完璧な非破壊検査技術を考えましたのでご紹介します. ポイントは観測しないで対象を見るです. 今回の記事は面白いですよ~~^^

ハイゼンベルクガンマ線顕微鏡の思考実験

ある小さくて軽い粒子の位置と運動量を知りたいとしましょう. 今回は光学顕微鏡で観測することにします. さて,光を当てるのですが,電波のような波長の長い光だと粒子を乗り越えてしまうし,解像度が低いので正確な位置は測定できません. かといって波長の短い光を当てると,今度は光を構成する光子一つ一つが弾丸のように振舞い,対象の軽くて小さい粒子は吹き飛んでしまいます. もし,この粒子が非破壊検査の対象物だったらどうでしょうか?位置を正確に測定した瞬間に破壊されてしまいますね. これでは非破壊検査が実行できません.従来,このような小さくて軽い粒子は非破壊検査が原理的にできないと考えられてきました. しかし,僕は一定の条件さえ満たせば,このような状況でも非破壊検査できる可能性があることに気づきました. 今からその方法について述べます.

量子光学を用いると・・・

完璧な非破壊検査
よく,量子力学では不確定性があって観測したものの位置と運動量を両方正確に測定することはできない,などと言われます. これは事実なのですが,これをもって測定には不確定性が伴う,どのように測定しても不確定性は排除できない,などと言ってしまうと少し語弊があるように思えます. ここではそのような不確定性を完全に排除したわけではないのですが,量子力学を用いることによって観測行為を行わずに障害物のあるなしを判断する方法についてご紹介します. ここでの方法はいかなる粒子一発も障害物に衝突させてないので完璧に近い非破壊検査になっているものと思われます.

まず,ここでの議論では,とりあえず簡単に垂直偏光した入射光子を|\updownarrow\rangle _{in}とし, 途中の経路で鏡やハーフミラーで反射通過後,偏光方向は変化しないものと仮定します. また,入射光子の状態|\updownarrow\rangle _{in}や出口out_1,out _2での光子の出力状態|\updownarrow\rangle _{out _1},|\updownarrow\rangle _{out _2}は全て規格化されているものとします.

各ルートの計算に入る前に次のことを押さえておきましょう. まず鏡は必ず光子を反射し位相は2分の1波長増えます. これは伝播係数kを掛けるとe^{i\pi} = -1掛けることに等しくなります. 一方,ハーフミラーは通過する確率は2分の1で位相はそのままなので,これは\frac{1}{\sqrt{2}}を掛けることに等しくなります. 反射する場合は確率は2分の1で位相は4分の1波長増えるのでこれは\frac{1}{\sqrt{2}}e^{i\frac{\pi}{2}} = \frac{i}{\sqrt{2}}を掛けることに等しくなります. さらに,経路L_1を通ると位相は伝播係数kを用いてkL_1進みますのでこれはe^{ikL_1}を掛けることになります. L_2についても同様です.

以上より,初期状態|\updownarrow\rangle _{in}の光子は左の図のように障害物がない場合,次の状態の重ね合わせ状態に変化する.

  1. a\to b\to out_1:\frac{1}{\sqrt{2}}e^{ikL_1}(-1)e^{ikL_2}\frac{1}{\sqrt{2}}|\updownarrow\rangle _{out _1} = -\frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1}
  2. a\to b\to out_2:\frac{1}{\sqrt{2}}e^{ikL_1}(-1)e^{ikL_2}\frac{i}{\sqrt{2}}|\updownarrow\rangle _{out _1} = -\frac{i}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _2}
  3. a\to c\to out_1:\frac{i}{\sqrt{2}}e^{ikL_1}(-1)e^{ikL_2}\frac{i}{\sqrt{2}}|\updownarrow\rangle _{out _1} = \frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1}
  4. a\to c\to out_2:\frac{i}{\sqrt{2}}e^{ikL_1}(-1)e^{ikL_2}\frac{1}{\sqrt{2}}|\updownarrow\rangle _{out _1} = -\frac{i}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _2}

この計算により,障害物がない場合,出口out_1方向の出力は,

 \displaystyle
 -\frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1} + \frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1} = 0

より,経路長L_1,L_2によらず必ず出力がなくなってしまいます. 一方,出口out_2方向の出力はこのとき,

 \displaystyle
 -\frac{i}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1} - \frac{i}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1} = - ie^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1}

となりますが,ここで| - ie^{ik(L_1 + L_2)}| = 1より,こちらは当然100%の確率で光子を検出します.

ここで右の図のように経路a \to b“光子が一個当たっただけで爆発する爆弾”を設置したとしましょう. すると今度は経路a \to bの経路は通れないので,出口out_1方向の出力は,

 \displaystyle
 \frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}|\updownarrow\rangle _{out _1}

のみとなるので,こちらから光子が出力される確率は今度は\left|\frac{1}{2}e^{ik(L_1 + L_2)}\right|^2 = \frac{1}{4}となります. 爆弾がなかった場合と比較するとこちらの出口では元々は絶対に光子が観測されなかったのに,爆弾を置いたことによって25%の確率で光子を観測することになります. もちろんこの方法では最初のハーフミラーを50%の確率で通過するから,50%の確率で爆弾は爆発してしまいます. しかしたとえ25%とはいえ出口out_1方向で光子を観測できれば,光子を当てずに爆弾のあるなしを判定できることになるわけです.

この例が示すのは量子力学を用いることによってあべこべに観測の不確定性を超えてハイゼンベルクガンマ線顕微鏡の限界を超えて 非破壊検査ができる可能性があることを示しています.

この案を実現してみたい方を募集します. 非破壊検査株式会社さんどうですか?

ここまで読んでくださって有難うございます. 何か間違い等ございましたら,ご報告いただけると幸いです^^


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